生徒会の憂鬱 |
プロローグ 神保イオリが生徒会長になってから数か月経ったある日の事。 「なぁなぁ副長〜、また『例のヤツ』届いてるんだけどー…」 「…またですか…暇ですね。」 生徒会室前に置かれた、目安箱。 この数週間、その箱にはほぼ毎日「神保イオリは今すぐ会長職を降りろ」と脅迫めいた切り貼り手紙が届いている。 「…昨日は会長の上靴に画鋲が山のように盛られていましたわ。」 「一昨日はトイレのドアに落書きでしたね。」 ヒビト、ゲラルト、カナメの三人は指を折りながら数週間の出来事を思い出していた。 落書き、画鋲、脅迫状、ゴミのばら撒きなどなど……どれも稚拙な悪戯だが、その後処理に回されるのはこの三人。 どこかうんざりした様子で手紙を眺めていた。 「つーかさ、俺は絶対、『アイツ』が怪しいと思うんだけどなー。」 「どうでしょう、まぁ、稚拙なところは頷けますが…。」 「そういえば今日は見ていませんわね?『彼』。」 三人は『誰か』のことを思い出しながら、遠くを見つめ…そして、ため息が漏れた。 そんな三人の憂鬱さを知ってか否か、当のイオリといえば、「くだらん」の一言で全く気にも留めていなかった。 その高圧的なやり方に生徒からの批評は賛否両論で、こういった事態が起こるのも想定の範囲内であったからだ。 そう、ある届け物が来るまでは………。 ◇◇ 6月某日、昼休み。 体育祭の報告と、雑務の為ヒビトとイオリの二人が生徒会室にやってくると、机の上に白い箱が置いてあった。 「…あれ?何コレ、差し入れ??」 「覚えがないな。…馬鹿者、勝手に触るn……」 ―パァァァアアンッ!! ヒビトが箱を開けた瞬間、箱が突然爆発した。 「びっ・・・くりしたぁーーーーっ!!!!?」 「軽率すぎるぞ、陽向。」 幸い、爆発といっても大きなクラッカーが弾けた様な程度のもので、爆発の瞬間にその反射神経で飛び退いたヒビトはかすり傷一つなかった。 イオリはヒビトの額を小突きながら目を細め、安全性を確かめてから箱を覗く。 中には爆発のせいで少し焦げた一枚の封筒が入っていた。中身はいつもの切り貼りの手紙… ―この10倍の威力の爆弾を学園に仕掛けた。本日中に神保イオリが会長職を降りなければ爆発させる― 「…随分ふざけが過ぎるな。」 イオリは眉間に皺を寄せながら、腕を組み少しばかり思案する。 そして、生徒のパニックを避けるため、『訓練』と称して学園内を捜索させることとしたのだった…― |