生徒会の憂鬱 |
エピローグ 中庭、いくら探しても出てこない爆弾探しにそろそろ飽きが出てきた生徒達が多く休憩をしている。 間もなく下校時刻のチャイムが鳴ろうというそんな時間、ベンチの傍に屈んで声を潜める三人の男子生徒が居た。 「…どうする、諸君…」 「クソ、学園中生徒が探し回ってるせいで身動きが取れない…」 「こうなったらココで起爆を…」 「…ほう、やはり貴様らが犯人だったか。」 「「「!!!?」」」 三人はその声に思わず息を飲み、ゆっくりと振り返る。にっこりとぎこちない笑みを浮かべて。 「じ、神保会長じゃないですかー…ははは、何ですか、犯人って…」 「そうですよ、犯人だなんて!僕たちは生徒会室に爆弾なんて仕掛けてませ…」 「コラッ!馬鹿ッ!!」 三人のやり取りに、少しも表情を動かすこともなく腕を組みながら仁王立ちしていたイオリ。 その圧力に押し負けた三人はじりじりと後退していくが… 「クソ―ッ!お前が悪いんだ!俺たちの大事なミナトちゃんグッズを全部没収するから!」 「そうだそうだっ!僕の天使、ミナトちゃんの限定プレミアポスターを返せッ!!」 「……かくなる上は自爆巻き添えだぁぁぁあ!」 そう言って爆弾の起爆装置らしきボタンを押そうとする男子生徒。 いつの間にか周囲に集まっていた野次馬の生徒達からは悲鳴が上がる…次の瞬間、 『…っざけんじゃねぇぇぇえええ!』 叫び声と共に、起爆装置を持っていた生徒の手を蹴り上げる男。 まるでトサカの様なモヒカン頭の男子生徒だった。 男が蹴り上げた起爆装置は宙に舞い、そして…素早く駆けつけたヒビトが華麗にジャンプしてキャッチ。 犯人と思わしき三人組はゲラルトとカナメがロープでぐるぐる巻きにしていた。 「っしゃあ!…な、な、俺、今のカッコよくね?」 「ええ、フリスビーキャッチみたいで素敵でしたよ。”犬”の。」 「会長、お怪我は御座いませんか?」 「問題ない。さて、どう処分したものか…」 「って、待て―――いっ!オレ、今の絶対オレがヒーローだよな!? 無視すんじゃねえッ!!」 生徒会役員達のまるで何事もなかったかのような会話に地団太を踏むモヒカン頭。 ひとしきり文句を言ったあと、ぐるぐる巻きの三人に向けて指を差し向けた。 「つーか、お前ら!神保イオリがムカつく女だってことは分かるぜ。けどなぁ、、やるんだったら正々堂々!正面からぶつかっていけや!ってことで、神保イオリ!今日こそ俺と勝負しやがれッ!!」 最後には、イオリに対して向けられた指先。 それはここ数週間毎日のようにイオリに差し向けられ、そして無視され続けたものである。 生徒会役員達は「またか」といった呆れ顔で眺めていたが、イオリはふっと表情を緩め口端を微かに上げる。 「そうだな、この功績を称えて相手になってやろう。当然、手加減はせん。 …ただし、負けたらお前は明日から生徒会役員として務めを果たしてもらおう。―…では、いくぞ。」 珍しく何処か楽し気な色の含まれる声でそういった刹那、イオリはモヒカン頭の腕を掴み………背負い投げた。 「…はぁっ!?何言って……ッ!!ぐわぁぁぁあ!?」 一瞬の出来事に、モヒカン頭は何が起こったのかも分からず、ただ青い空を眺めていた。 「真砂、庶務の席が埋まったぞ。”戦術1年、駒貝ジンクロウ”だ。」 「……いいんですか、あんな飼い主の手を噛みそうな犬で。」 「私が読み違えたことがあるか?」 ゲラルトは静かに息を吐いた。 それは異論がないという意味で、後日ジンクロウは有無を言わさず生徒会『庶務』の席に就くことになる。 捕まった三人の生徒はといえば……度の過ぎたアイドルオタクで、風紀を乱すとグッズを取り上げられたことを逆恨みし、今回の事件を引き起こしたのだという。 爆弾は無事に回収解体されるのだが、実は威力はそう強いものではなく仮に爆発しても軽いやけど程度の被害だったようだ。 幸い一人もけが人が出なかった為、一か月寮のトイレ掃除の罰を受け入れることで、三人は1週間の停学処分に留まった。 こうして、無事に事件は幕を下ろし、生徒会の長い長い憂鬱は晴れたのだった……。(多分) |