○年目の女子会
「メルちゃ、久しぶり〜」

手を振りながら志水シュシュ、続いて冬葉フユがやってくる。

「メルメル、元気してました?」

卒業して数年、三人はことあるごとに集まり、食事をしたり買い物をしたりと女子会を堪能し親睦を深めている。
今日はメルの実家であるペクトライトの『イルカ亭』へやってきた。

「シュシュ、フユ、いらっしゃ〜い!ごめーん、もうちょっとで上がるから少しだけ待ってて。飲み物持ってくる!」
「じゃあ先に頼んじゃいましょうか?お酒飲む人―?」
「はいっ!飲みますっ!!甘いのっ。」

予想していたものの念のため確認すれば、シュシュは案の定、元気よく手を挙げた。

「ふふ、飲み過ぎないでくださいね?私はお茶で。」

二人の注文を聞けば「オッケー」と片目を閉じメルは奥へと消えていった。

「ふふ、相変わらずメルメルは元気そうですね。」
「ねー、ていうかメルちゃが元気ないのとか…今まであったかな?」

「…はい、お待たせっ!ナニナニ、もしかしてあたしの悪口?」

仕事を終えたメルは三人分の飲み物を持ってテーブルへと持ってくると、唇を軽く尖らせて二人を見つめる。

「ちがうちがう。ねぇ、フユちゃ?」
「えぇ、私たちの知っているメルメルはとっても可愛くて元気って話でした」

二人は顔を合わせて笑い合う。

「むぅ、なんか釈然としないけどまあいっか。それよりさ、今日は何の話する?」
「待ってましたっ。聞いてきて!シュシュね、今度……―」

それから数時間後、夜遅くまで話し込んでいた三人は、酔い潰れたシュシュを抱えて店を出た。

「シュー、寝てしまいましたね」
「ううーん、もう飲めないよぉ…」
「…ほんっと、弱いクセに飲むんだから。ほらフユ、手伝って」

シュシュを支えながら歩くメルを見て、フユは思わず笑みを浮かべてしまう。

「なぁに笑ってんの、フユ?」
「いえ、ただ……こんなにも素敵な人たちに囲まれて、シューはとても幸せ者だなって思ったんです」

そんなフユの言葉を聞いて、メルは満面の笑顔で答える。

「当然だよ!だって友達なんだもん。でも『シュー』は、じゃなくて『あたし達』は、でしょ?」

「ふふ、もちろんです」
「…メルちゃ…フユちゃ、大好き〜…むにゃむにゃ…」

こうして三人の夜は更けていく……。

◆志水シュシュ
卒業後はベリル所属のハンターになり地元の依頼を優先してこなすようになる。
勉強などはあまり得意ではなかったが、事務作業や様々なサポートが大好きなので、人手が足りない時などはギルドの事務系のお手伝いをすることもしばしば。本人としては、最前線で戦うよりも事務系の仕事に就くのも良いなぁとぼんやり考えている。

◆姫鵜メル
卒業後、迷わずペクトライトのギルドに所属を希望。
『身近な幸せ』を守るをモットーに落とし物探しや迷子の親探しなど地域密着型の仕事を好んで受けていた。
仕事の休みの日には実家の料理屋を手伝うことも多く、街の大人たちは勿論、「子供達」から特に人気(同レベル扱い)でよく一緒に遊んでいる姿が見られる。