聖誕記念武闘大会―それは古くより続く、レクラン王国の伝統行事である。 年に一度、騎士団や候補生となる騎士学園の生徒達が参加し、各々己の実力を振るい競う大会。 国王を始めとした国の上層部の者達や貴族も観戦するため、騎士にとっても騎士学園の生徒達にとっても、己の存在をアピール出来る絶好の機会である。 しかし昨年よりその伝統行事に変化が生じている。 古くから有能な騎士を多く輩出してきた、貴族の中でも上位に位置する“天掟家”。 その次期当主として期待され、現在騎士学園現生徒会会長を務める天掟（てんじょう）ミカドの推薦が発端となり、昨年神風学園の参加枠が設けられ、さらには今年、予選を通過し一定以上の能力を備えたことを条件に一般市民からの参加枠も設けられた。 元々一般市民も観戦費を払えば観戦することは出来たのだが、騎士と候補生となる騎士学園の生徒という限られた範囲内での格式ある伝統行事が国民全体を巻き込んだ伝統行事へと、ゆっくりと、次第に形を変えている。 そして今年、レベルに応じた二部門に分かれ、開催された大会。 一般部門 騎士部門に出場しない騎士学園生徒に加えて、神風学園生徒、そして一般市民からの参加枠で戦う一般部門の決勝戦は、観客の誰もが予想だにしない展開となった。 開始直後は野次を飛ばす者や、勝ち上がるのは騎士学園生徒と決め込み戦いに無関心の者達が多くいたにも関わらず、神風学園の生徒達が連戦連勝するにつれ、昨年の戦いは“運”だけでは無かったと、その実力を認める者達が増えていった。 そして決勝戦、惜しくも神風学園は騎士学園に敗れたものの、その戦いはまさに接戦。紙一重の差といっても過言ではない。 一般部門では騎士学園生徒チームの優勝、そして神風学園生徒チームは準優勝、という結果に終わった。 騎士部門 騎士団長・十束（とつか）ヴラディミール、副隊長・護旦（もりあき）サクを除く騎士団と、騎士学園生徒が競う戦いだ。 昨年は騎士団の精鋭部隊が急遽魔物討伐のために不在となり、代わりに騎士学園のミカドを筆頭とする生徒会メンバーが優勝した。 しかし今年は精鋭部隊が加わっての戦い。 騎士学園といえども対戦相手が経験豊富な正規の騎士団では、これまでの戦績を考えれば上位は難しいと思われていた。 尤も、優勝せずとも己の存在がアピール出来れば十分に意味のある大会だ。 だが、そんな中でも、三位という好成績を収めたチームがある。 昨年優勝した、生徒会メンバーだ。 天掟（てんじょう）ミカド 橘（たちばな）アラン 藤林（ふじばやし）オーウェン 八束（やつづか）ラン 彼らの連携は実に巧みで、まるで部隊の一つかのようであった。 その戦術が、個々の能力以上の力を発揮させているのだ。 結果、騎士部門での優勝、準優勝は精鋭部隊の騎士も交えた騎士団チームが勝ち取った。 神風学園の生徒と面識のある九々龍（くぐりゅう）バロンの姿も、準優勝チームにある。 こうして、今年の武闘大会も、昨年以上の盛り上がりを見せ幕を閉じたのであった。