「神保先輩の剣術、かっこいいんだろうな…。 先は長そうですが、頑張ります。」 掛けられた言葉には、嬉しそうな笑顔を向けて
「仲良しですね。氷華先輩を口説けるのって、多分炎龍先輩にしかできないですよ。」 二人が一緒にいる光景が思い浮かべば表情を緩めて、校舎をぼんやり見上げる。
返ってきた言葉は想像とは違ったのか、 『えっ…?』と動揺を隠せず、少しの間視線を彷徨わせていた。
「みんなでわいわいするのもきっと楽しいですからね。…やるだけやってみます。」
送ってくれるとの言葉には少し驚いて僅かに目を見開くも、 カイに続いて渡り廊下へと上がる。 頬を撫でる風は昼間より冷たく感じて。
「風があって少し寒いですね…………手をつないでもいいですか?」 長い間をあけた後、左側に立つと右手をそっと差し出そうとし―その手を取るかどうかは、相手に任せるのだろう。 カイが困っている様子なら、『冗談です。』と笑って手を下ろし、許されるなら、少しの間その手を強く握りしめていただろうか―。
校舎の玄関にたどり着けば、 「今日はたくさんお話に付き合ってくださってありがとうございました。では…。」 少しかしこまった挨拶で、頭を丁寧に下げ、背を向けると少しの間足を止める。
「……炎龍先輩、また近いうちに。」 体ごと振り向くと、まるで嬉しさがにじんで溢れたような笑顔を残して、正門の方へとゆっくり歩きはじめる。
後日、借りていた上着と差し入れの焼き菓子を持って生徒会室を訪れる少女の姿が見かけられたという…
【行動:下校(学生寮へ向かう)】 |