>那智
「同窓会じゃない会。 たまたまそろったというか、偶然、そのー‥‥ぐうぜん‥‥、」
凛桜と有布を手のひらで示しつつ、この奇妙なめぐり合わせを説明しようとするが、やがて静かに手をおろし「‥‥会」と言う。ぐうぜん会。 遠慮がちな距離感には、ふすんとやや不満げに鼻を鳴らすものの、すぐに首を傾げて「なんか頼む?」とまだ相手の口元を隠しているメニューを見やる。
「おれね、いま21。 那智さんは‥‥ちょっとお姉さんですか‥‥?」
そばで顔を合わせてみると、自分が知る相手より大人びているのがたしかにわかり、そわそわの混じった小声で訊ねる。結い上げた髪や装いなど、不躾でない程度ながら確かめるようにひとつひとつ見て、「ラブリー」と頷いた。
>凛桜
凛桜の考察に「なるほど」と呟いて、こちらもふと真面目な顔に。 好奇心を超えてあれこれ分析したくなってきたところ、ほどよいタイミングで相手が茶化すので、つられて表情を和らげ、
「‥‥まーそうか。細かいことはさておき、楽しいし。 こんな感じで集まるの、久しぶりでうれしい。 相変わらず出雲とこっちと行ったり来たりだから、 しばらく会えてない人もいるんだよなー」
集っている面々に順に視線をやって、言葉どおり嬉しげに双眸を細める。 それから「ちなみに、ばめにはつい先月会ってるんだけど」と、相手にとって少し先の未来でも、互いの交流が変わらないことを伝えてのんびり笑う。
>有布
相手の考察に「おお」と真っ黒な瞳が少し輝き、「ドッペルなんたら。たしかに」と頷くが、若返りたいとの言葉には笑って、
「そーかな、おとななさくらぎもいいけどな。 おれはむしろ、はやく成熟したい。こう、いぶし銀というか‥‥そうそれ、いい味を出したい」
ややしぶい顔を作って遠くを見ながら、(中身はゆず茶だが)それっぽく湯呑みを傾ける。 一緒に働く未来については、楽しみそうな様子はそのままに、
「な、叶うといいなー。 おれがいま、出雲にいる時間がけっこー長いので。 ‥‥つか、未来でもそうなのかなこれは」
仕事でちょこちょこ顔を合わせていたなりたての頃に比べて出雲率が上がった現状について零し、それから25歳の有布にとっても久々の再会なら、数年後の自分もあまり変わっていないのだろうかと少し笑う。
「よかったら未来のおれに『一緒に働こうって言ってたのまだ?』って聞いてやってください、お兄さん」
那智の「なんかかわいくないですか!?」を横で聞いていたからか、べつに声色を変えたりはしないが、ちょっとかわいくお願いしておく。
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