>凛桜
頭をちょっと下げて、よしよしと撫でられる。 撫でられる間は、嬉しそうににこにこ笑っていた。
「ここだけの話、在学中からりお先輩は、あたしにとっていちっばん、かわいい先輩です」
そう言いながら、軽く握りこぶしを作っていた。
「駅前の…あ、あの行列ができてるとこですか?一度あたしも食べてみたかったんで、もちろん!」
10個でも100個でも任せてください!とドーン、と胸を叩いた。 連絡先と聞いて、「あたしの連絡先を渡すチャンス…?」と迷ったが、これは未来のネタバレだろうかと少し考えた。
「あ、はい!じゃあ、帰ったらしょーすけ先輩に聞いて見ようかなぁ」
と言いつつ、拳を握ったまま「はい、必ずー!」と何度も何度も頷いた。 別れる時まで、自分の連絡先も渡そうか迷って、最終的には実家の住所を教えていたかもしれない。
>有布
「皆集まって〜、っていうのは、意外とないですねぇ。割と自由人が多いし」 同学年の皆の顔を思い浮かべながら、うんっうんっと何度も頷いて。
「でも、ふらっと会えたら、皆とはフツーに喋れそうだなって思います。アルフ先輩とりお先輩みたいに!」
そう言っても両手を合わせつつ、ふたりの仲がよさそうな様子ににこにこしていた。 帰ってからも普通で良い、には瞬きを数回して。
「えーっ、じゃあ帰ったらアルフって呼んじゃおう。 あたしが呼び捨てにしたら、今日のことを思い出してくださいね!」
そういえば、一番未来にいるのは自分なのだ、と急に実感がわいたらしく、そわそわした。 まずはりお先輩と会って、それでアルフに…と指折り数えている。
>宵丞
「ふっふっふ、よろしくお伝えしましょう。 そーいえば、沙耶けっ………け、けけっこうかなり、元気です!」
相手の年を思い出して、これはまだネタバレだった…と慌てて口をふさいだ。 天文部がなつかしい、には大きく頷いて「また、皆で集まれる機会、あったらいいんですけどねぇ」としみじみした。 大人の自分を自分が甘やかすのは…みたいな理由で、レスキューを辞退していたのだが、 にらめっこしても別に、アイスコーヒーは別に甘くはならない。 大人しく砂糖とミルクを頼もうとしたが、相手の注文に目をぱちぱちさせて。
「……あずけられました!では、こちらはシンテーします」 厳かに、すすす…とアイスコーヒーを献上した。 どんなパフェがきても、甘い生クリームは引き取る気持ち。
呼び捨て、に斜め上の虚空を見ているのに釣られて、一緒に斜め上を見る。 盾越しに、目を何度も目をパチパチさせて、「で、では、ちょっと未来で…」と此方も照れていた。
「お月見会、なつかしいなぁ。…合宿もしてたし、あたしたち、ものすごくまじめに部活してたのでは…!?」 メニューの盾の向こうで、わなわなしていた。 続く返答をドキドキと待っていたが、途中から「あっ本人にこっそり聞くのは、やっぱズル…?」と考えながら、目をぐるぐる回していたが。 帰ってきた言葉に、少し考え込んで、メニューを口元から降ろし。
「じゃあ、5年後。とっておきの言葉で誘うから、待っててくださいね!」
そう言って、ちょっとだけ大人になった笑顔で笑った。 忘れててもいいけど!、いややっぱダメ!みたいなことをもぞもぞ付け足し。
>ALL
きまぐれパフェの甘い部分担当を無事に終えると、ごちそうさまと手を合わせていたが。 式、の単語に、桜木と燕沢の顔を交互に見て。
「えっっ、ふたりってそういう!?ゴカンケーでしたっけ!?」 今日一番のやかましい声が出る。 桜木に「いいなぁ…」みたいな視線を送っていた。
それから、最後の一人になるまで、カフェテリアにたっぷり居座って、「また向こうで!」と、名残惜しく皆を見送る。 最後の一人になると、紙袋から少し古びてしまったとんぼ玉のかんざしを大事そうに取り出し、久しぶりに高めに髪を結い上げた。 高く結い上げると、衣服で殆ど隠れていた、首の後ろに大き目な火傷の跡のようなものがあるのが、少し目立つ。
「じゃあ、小次郎さん!……えっと、また?また来ます!」
小次郎さんに大きく手を振って、軽い足取りで扉から帰っていく。
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