帝国からの来訪者 プロローグ3 貴方たちは学園への視察を終えた皇帝夫妻の馬車を護衛しつつ、虹の湖へとやってきた。 当然ながらシルヴァン、レクラン両国の精鋭が護衛としてついているものの、将来性ある学生にも希少な機会を近くで体験させたいというアサヒ王女の采配により、こうして神風学園の生徒にも声がかかったという。 学園では学園長と生徒会長が出迎え視察したのみで、生徒たちとは直接対面機会は無かったが、その際も物々しい空気が漂っていた。 移動中もその空気は変わらず、馬車を取り囲み同行するだけでも皆、緊張の面持ちだ。 そして騎士達の中には見慣れた3名の、バロン、キティ、ノエの姿もあった。 大使としてシルヴァン渡航歴のあるノエは今回の案内役として抜擢されたようだ。 ノエ 「陛下が馬車から降りてまいりますが、 くれぐれも陛下がお話の間は口を開くことの無い様お気を付けくださいね」 緊張感を和らげるようなのんびりとした口調で人差し指を口元に立て、「しー、ですよ」と双眸を細めて静かに告げた後、馬車の扉をノックし声をかけてから静かに開く。 と、刹那に騎士たちは皆一斉に膝をつき頭を下げた。 まずはアサヒ、続いてロランドが馬車から降りた。 そして最後にキナリーが軽やかで華やかな笑顔で、ロランドの手を借り降りてくる。 三人が並ぶと、まずロランドが口を開く。 ロランド 「道中御苦労であった。皆、楽にせよ」 ロランドが一言告げると、騎士たちは頭を上げ、起立した。 と、そこまでは痛いほどの威圧感を感じさせていたものの、ふと、ほんの僅か、誰しもが気づかぬ程ささやかに口調と眼差しが柔らかくなる。 そっとキナリーの腰を支えるようにして前に押しやり、 ロランド 「此度はまず、我妻キナリーをもてなしてやって欲しい。 この自然豊かな土地への訪問を心から楽しみにしていたのだ」 そう告げると、傍のキナリーは「よろしくお願いしますっ」と頬の傍で両手を合わせ、声を弾ませながら無邪気に笑った。 ロランドの話が終わると、アサヒが彼に目礼してから騎士たちに向き直る。 アサヒ 「皆さま、此処までお疲れ様。 この虹の湖はつい先日、我が国の騎士および神風学園の生徒たちにより 平定されておりますが、引き続き気を抜くことの無い様尽力くださいね。 バロン、ノエ、あとは頼みました」 アサヒの言葉に二人は胸に手を当て礼をすると、すぐに動き始める。バロンは騎士達に配備など指揮を執り始めた。ノエは貴方たちの元へとやってくる。 ノエ 「ふー、緊張しますね」 言葉と表情のかみ合わない様子で緩やかに笑いながら、額を拭うような仕草をして見せる。 ノエ 「さて、君たちは今日は主に騎士の仕事の見学です。 が、このような機会を近くで見ることは通常叶いませんから、 しっかりと目に焼き付けておきましょうね。 特に目立つお仕事はありませんが、もし万が一危険があったりした場合は ハンターらしく動いていただければ。 第一グループは僕と一緒に同行、 第二グループは馬車付近で先輩と一緒に警備です。 そうそう、知ってはいると思いますが、 アサヒ様はじめ、王族の皆様には自分から話しかけるというのは無礼に値しますので、 彼方から声をかけられた時だけお話しするようにしてくださいね。 くれぐれも言葉遣いには注意すること」 ぴっと人差し指を立ててたしなめるように言う。 丁度バロンが騎士たちの指示が終わり第二グループの生徒達を迎えに来た。 アサヒ 「バロン、ノエそろそろいいかしら?」 ノエ 「はい、アサヒ様」 バロン 「はい」 貴方達は第一グループだ。 ノエ 「さぁ、僕らは遅れないよう後ろをついて同行しましょう。 気になることがあれば僕に聞いてくださいね」 二手に分かれると、貴方たちはノエと共にアサヒの先導で散策を始める皇帝夫妻のすこし後ろで同行についた。 |