士学園生徒会がやってきた!!
- inside story -

学園内大捜索が始まる少し前の話…。

その日、突然の騎士学園の来訪に学園内はザワついていた。
生徒会役員は急遽生徒会室に集められ慌ただしくミカド達を迎え入れた。

「サプライズがお好きとは伺ってましたけど、これはしてやられましたねぇ〜。
改めまして、イオリ会長の後任の音羽リツと申します!
よろしくお願いします、ミカド会長!」

リツはミカドに向け、冗談めいた口調で言いながら肩を竦めた後、片手を差し出し柔和な笑みを浮かべた。

「サプライズ、というのはイオリちゃんの入れ知恵かな。
そのつもりは無いのだけどね。
…僕は天掟ミカド、ミカドだよ。よろしく」

学園内のざわつきや、慌ただしく集められた生徒会役員達の様子など、気にもとめないミカド。″サプライズ″には不思議そうに首を傾げる程度で。
穏やかな声音と表情で挨拶をすると、差し出されたリツの手をそっと取り、自らの口許に近付けてから、そっと離した。 リツは慣れないその紳士的な仕草にほんの僅か、ぱちりと瞬くが刹那、小さく息を吐くように笑いを零した。

「入れ知恵…と言いますか、忠告…のような感じですかね?」
「忠告とは酷いなぁ…。共に楽しんでくれていると思っていたのに。」

ミカドはリツの言葉に「イオリちゃんらしい」と、小さく口にして可笑しそうに笑う。

「イオリさんも楽しかったんじゃないですかね。
嫌ならハッキリ断る方でしょうし…なんて、すみません。
ミカド会長の方がご存知ですよね。」

「…あぁ、僕もそう信じている。信じているんだ」

リツがイオリの事を思い返しながらそう言うと、はた、として軽く肩を竦めながら茶化す。
ミカドは微かに口角を持ち上げ、穏やかに告げた。

「…ふふっ、……さて、今日はどのようなご用件で?」

リツはミカドに向けて座るように促しつつ、揃い踏みの生徒会役員達を一瞥して軽く首を傾ける。
ミカドはそれを受けてゆっくりと腰を下ろし、ちらりと後方に控えたメンバーを視線で示しながら

「交流だよ、交流。
君達を僕らの学園に招いたことはあっても、実際僕らが…
まぁ、僕を除くメンバーがここを訪れたことは無い。
彼らにもいい経験になると思ってね。
…特別なものは望まない。自然体で、この学園の様子を見て回る予定だよ。」

「なるほど!
こちらからご挨拶に、とは思っていたんですが…皆さんにも学園を知って頂けるのは光栄です!」
「ありがとう、協力、感謝するよ」
「協力だなんて!自由に見て回ってくださいね………………―」

ミカドの言葉にパチと両手を合わせて嬉しそうに微笑んだリツ。
しかし、ふと頭を巡った何かに口を噤み、思案ののち、ほんの一瞬口端に悪戯な笑みを浮べた。

「…すみませんが、ゲラルト先輩、私はもう少しミカド会長とお話させて頂きたいので
皆さんを先にご案内して頂けますか?
リコちゃんとヒビトくんは教室に戻って頂いて大丈夫です。」

そうにこやかに、背後にたつ副会長にむけて軽く頭を下げながら告げる。
暗に二人きりになりたい、と言うことなのだろう。

「…だそうだ。女性のお誘いを断るわけにはいかないからね。
君達は先に行っていてくれ。」

リツの言葉を受けミカドは肩越しに振り返り、騎士学園のメンバーに告げる。
それぞれが部屋を後にし、生徒会室にはリツとミカドの二人きり。
ミカドは可笑しげに口許を緩ませリツへ視線を向ける。

「似たようなことを、考えているのかな…?」
「どうでしょう?…ミカド会長、かくれんぼはお得意ですか?」

ミカドの言葉を聞いてリツは表情を緩めずにはいられなかった。
前々から秘めていた、神風学園と騎士学園とのしこりを取り除きたいそんな切っ掛けになればと思いついた悪巧み。
果たしてそれは、皆の心に響くのだろうか……。

―END―